楽しい休日

旅行やドラマ、映画、ミュージカルなど

ミュージカル「オリバー!」感想

ミュージカル「オリバー!」を見に行ってきました。

 

f:id:jollyholiday:20211012002416j:plain

f:id:jollyholiday:20211012002412j:plain

 

チャールズ・ディケンズの有名な小説「オリバー・ツイスト」をミュージカル化した本作品は、1960年にロンドンで初演、1963年にブロードウェイで上演されトニー賞を受賞、1968年には映画化されてアカデミー賞を受賞している。いわずと知れた超名作、なんだろうけど、私は映画も見たことがなく、ほぼ予習なく見に行きました。

ディケンズ原作なので子供がひどい目にあって、皮肉がたくさんあって、あまり後味のいい終わり方はしないのだろうというぼんやりとした予想はしていたけど(ディケンズは「デヴィット・コパーフィールド」「二都物語」「大いなる遺産」は読んでる。)。

 

結果、見に行ってよかった!チケットを買い増して2回見に行った。

 

f:id:jollyholiday:20211012002419j:plain

1回目のキャスト

f:id:jollyholiday:20211024232816j:plain

2回目のキャスト

とにかく、大人数での歌とダンスがすごく見ごたえあって、うわー豪華なものを見せてもらっている!って感じで満足できた。歌はさすがに名作だけに聴いたことがあるような耳なじみのよい美しいメロディが多かった。Consider YourselfとかWho Wiil Buyの群衆の中をオリバーが動きながら次から次へと色々な人が出てきてパフォーマンスを見せてくれる振付が楽しくてすごくいいな!と思ったのだけど、帰ってからパンフレット見てみたら、振付はマシュー・ボーンだった。プロデューサーがキャメロン・マッキントッシュであることは宣伝にたくさん使われてたけど、振付マシュー・ボーンってことを宣伝文句に使わないのは謎だけどそういうものなのかな(バレエだと「マシュー・ボーンの○○」っていうので売り出しているけど)。

 

子供たちが大活躍する演目なので、マチネは小学生や中学生も結構来ていた。ただ、ストーリーはすごく楽しいかというとそうではないし、あんまり子供向けじゃないようなシーンやセリフもあったので、楽しめたかなあと心配になってしまった。

 

プレスコールの映像。見どころのダンスシーンもいくつか見れる。

 

 

 

以下、ネタバレありの感想。

 

 

冒頭、バンブル氏とコーニー夫人のシーンとか葬儀屋のシーンとか、うわ~ディケンズ、英国文学って感じ~と思いながらみつつ、こんな感じでずっと続いたらさすがに辛いと思っていたけど、オリバーが逃げ出して、ドジャーが出てきてから一気に楽しくなった。

 

オリバー役は2回とも高畑遼大くんでした。声が本っ当に美しくて上手だった~。ボーイソプラノのあの透き通る美しさは何なんでしょうね。ドジャー役は、1回目が佐野航太郎くんで、2回目が大矢臣くん。2回目の子は声変わりかな?高音が出なくて、セリフのような形にしていた。子役の成長は早い…。大人キャスト優先で日程を決めてしまったのだけど、ビリー・エリオットにも出ていたという川口調くんも見てみたかったな。

 

フェイギンは、ダブルキャスト両方見た。武田真治ってこんな歌えるんだってびっくりした。動きはさすが鍛えているという感じのキレのある動き(老人役だけど笑)。関係ないけど、大河の小栗様かっこよかったです。市村正親さんはさすがの貫禄で…なんの違和感もない、初演からこの役ですけど何か?みたいな感じ。さすがマッキントッシュが最初から指名していただけある。一幕でフェイギンが自分の宝物箱をみながら観客に語り掛けるようなシーンがあるのだけど、ここはキャストによってアドリブなのか?内容が結構違った。

フェイギンは、窃盗団の親玉で悪いやつだけど、救貧院やお役人よりもよっぽど子供たちのことを気にかけていて全くの悪人というわけではないという人物で、まさに行き場のない若者を取り込む反社って感じの人物だった。

 

ナンシー役は2回とも濱田めぐみさん。実は1回目、当初見たことないしと思ってソニンさんの回をとったつもりが時間間違えていて、濱田めぐみさん出演回を見ることに。そしたらもう圧倒的で。彼女が出てくるだけで舞台が一気に華やいで、有名なAs Long As He Needs Meは圧巻で、オーブの音響のせいなのか、他はコーラスでさえなんか遠くに聴こえたんだけど(3階席もだったけど、1階席中央でさえ!)、彼女だけまっすぐに声がこちらまで届いた。

ナンシーはこの作品である意味一番重要で、彼女のビル・サイクスへの愛情(完全にDV加害者との共依存で歪んでいるのだけど…)や彼女の良心がオリバーの運命を変えるんですよね。キャラクター的にはソニンさんの方が合ってそうだなとは思ったので見れなくて残念。

 

ビル・サイクスは文句なしの悪役。実は最初にこの作品見に行こうと思ったきっかけは、ビル・サイクス役でspiさんが出演しているからで、なぜspiさんを見に行こうかと思ったかというと、ジェレミー・ジョーダンにちょっと歌い方が似ているという噂を聞きつけたからなのですが…。1回目はまさかの時間間違いで、原慎一郎さん(アナ雪のクリストフ吹替)だった。歌は原さんの方がいいなと思ったけど、役としての説得力はspiさんの方があったかな。最後「お前の目!」っていうセリフとか、作中ではほとんど語られないナンシーとビル・サイクスの関係、ビル・サイクスのこれまでの人生が見える感じがした。ジェレミーに似ているかどうかはわかんなかった…だってビルは低音ボイスで歌う役だけど、ジェレミー・ジョーダン声高いから!spiさんも体格のせいか低い音域の役をやることが多いのかもしれないけど、友人に見せてもらったミュージカル刀剣乱舞のコンサートとかの歌声聴くと多分声高めですよね?だとしたら似ているかもしれないのでコンサートとかで海外ミュージカル曲とか聴く機会あったら聴いてみたい。

 

他のキャストも実力派ぞろいで(鈴木壮麻さんがあれだけではもったいない気がした)、アンサンブルも含めて、とっても聴きごたえ、見ごたえのある総合的にとってもクオリティの高い作品だったと思う。

 

一方で、ミュージカルファンからは辛口な評価も聞こえてくる。ストーリーが、ナンシーがビル・サイクスに撲殺されるという衝撃的に理不尽で暗い結末な上に、特にオリバーが活躍するとかいいことをするわけでもないのにお金持ちの孫だったということで幸せになる一方、他の窃盗団の少年たちが救われるわけでもなく、というところが理由でしょうか。それはすごくわかる。ただ、私は、まあディケンズ原作だしこんなものではと納得してしまって特にストーリーに納得いかないとかはなかったのだよね。レミゼも初見ではジャベールの自殺は意味わかんなかったし、マリウスには「おい??」ってなるしファンテーヌもエポニーヌもかわいそうすぎるとは思うけど、まあ、ヴィクトル・ユゴーの原作小説がそうならそうか…で流せるのと一緒というか。一方で、「ミス・サイゴン」はすっごく嫌で、「蝶々夫人のストーリーがそうだから」と言われても「この時代にこんな話書くんじゃねえ!」ってなるこの差は何だろう…と考えている。一つは「ミス・サイゴン」は翻案というのはあると思うけど。

 

どうでもいいことだけど、今回1回目はオーブの3階席で見たのだけど、高所恐怖症なのでめちゃくちゃ怖かった。プルプル震えながら席まで行って、座ってからも心が落ち着かず…「何これほとんど天井じゃん、あ、なるほどこれが天井桟敷…」とか考えていた。タワー・オブ・テラーみたいに急降下するような気がして、シートベルトをつけさせて!ってなったので、もう二度と3階席はとらない。

 

最後にこちらはUKツアー版のトレイラー。サマンサ・バークスさんがナンシー役を演じていた。彼女のAs Long As He Needs Meは素晴らしかっただろうなあ…。