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ニューヨーク旅行 ミュージカル「MOULIN ROUNGE! THE MUSICAL」感想

今年の観劇は今年のうちに書き終えたい…ということで2023年の始めに行ったニューヨークの観劇記録を再開。

 

今回は、ニューヨーク渡航の一番の目的

"MOULIN ROUGE! THE MUSICAL" @ AL HIRSHFELD THEATRE

の感想です。

 

 

元々私はバズ・ラーマン監督の映画「ムーラン・ルージュ!」が大好きで、お金のない学生の頃にサウンドトラック2枚を買い、その後DVDも買っていて、好きな映画を5本上げろと言われたら、この映画をそのうちの1つに上げます。

もともとミュージカルに興味ない派というか、ディズニー映画の歌うシーンは「なんで歌う?」と歌うシーンなくていいのにと思っていた派でした。が、ムーラン・ルージュ!の映画を見てから、ミュージカル映画に興味を持ち始め、なんやかんやあって今こうしてミュージカルを見るようなっている。ムーラン・ルージュ!がなかったら海外にミュージカル見に行くこともなかったかも。

 

舞台でミュージカル化するという話を聞いた時から見に行きたかったのだけど、私がはじめてNYに行った2019年春はまだ開幕していなくて見れなかった。でもいつか絶対に見に行くぞ!と思っていたらパンデミックになってしまったのですよね。。

その後、ムーラン・ルージュ!はトニー賞を受賞し、オリジナルキャストも卒業していったのだけど、2022年の年末にオリジナルキャストのアーロンがクリスチャン役として2023年1月から期間限定でカムバック!というニュースが駆け巡って、もう勢いで航空券とホテルをとりました。

 

だって、このロクサーヌ見たいじゃん!!きっとこれがラストチャンスだし、行かなきゃこの先ずっと後悔する!!って思ったのです。

 

 

当時はまだコロナの規制もある時期だったけど、ちらほら日本のミュージカルファンも渡米していて現地の様子の情報も入ってくるようになっていたし、ワクチンを3回以上打っていれば陰性検査は不要だったので、不安はありつつもニューヨーク行きを決めた。

チケットは事前に良い席を購入していきました。カンカンシート(前方通路と舞台との間の席。ド高い)は観にくいかもと思ってセンター前方席。手数料込みで約280ドル…泣。この旅行で一番お高いおチケットでございました。これで当日アーロン出なかったらどうすんのよと思ってたので(期間限定出演だとあまりアンダースタディになることはなさそうだし、スターが出ない日は結構事前に教えてくれたりするのだけど、当日コロナ陽性が発覚するとかやむをえない事情は十分ありえるので…)、当日PLAYBILLにアーロンの名前を見つけたときの安堵感たるや!!

 

ムーラン・ルージュ!の劇場は入った瞬間にバズ・ラーマン映画のような世界観でギラギラごてごて。

 

風車があり

象もいる

 

開演前からキャストが舞台上に出てきてパフォーマンスをしているのだけど、ちょっと目のやり場にこまるような恰好だったりで、淫靡で頽廃的な雰囲気。

そしてそこに、颯爽と現れるクリスチャン役のアーロン・トヴェイトがめちゃくちゃかっこいい!!(インスタの動画は復活初日なので特に歓声がすごいと思うけど、私が見た回もみんな大喜び)

 

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で、見た感想はですね。アーロン・トヴェイトのクリスチャンを見るという点では大満足で、彼の歌も演技も本当に素晴らしくて、高い旅費とチケット代が余裕でペイしました。

 

が、作品としては、ちょっとうーん、という感じ。

以下、ネタバレありの感想。

 

 

映画もだけど、ムーラン・ルージュ!は既存楽曲を使用したジュークボックスミュージカル。

誰もが知っているヒットソングを多数使用して、それをド派手なやりすぎ演出とダンスでバズ・ラーマン映画の世界観を再現しています。

映画と同じ曲もあるけど、結構変更されていて、ビヨンセ、アデル、レディ・ガガなどの映画公開以降に活躍しているディーバたちの曲が大幅に増えてる。ちょうどドラマGleeをやっていた時期と製作時期がかぶっているのか、Gleeで知ったポップソングがたくさんあるのも嬉しかった。特に私はアデルの"Rolling in the Deep"が使用されているのが嬉しかった!

 

クリスチャンがロートレックたちに自作の歌(詩)として披露するのが、サウンド・オブ・ミュージック(これは映画も一緒)だったり、The PoliceのEvery Breath You Takeだったりとかで笑える。

そして、新作のタイトルを「ボヘミアン・ラプソディだ!」というところで大うけ。

 

歌としては、映画版と同じYour Song(舞台版はデュエットになってる)もElephant Love Melody(使用曲は変更されてる)もCome What Mayもよいのですが、舞台版は、二幕のChandelier(映画だと冒頭に出てくるアブサンと妖精がここで登場)→El Tango De Roxanne(映画版からアレンジが変わってる)→Crazy Rolling(Rolling in the Deepのマッシュアップ!)の流れが最高潮。

Chandelierの後、黒革のロングコートでアーロンクリスチャンが出てきた瞬間に会場がヒュー!来た来たー!!って盛り上がって、そこからのロクサーヌ。アーロン、意味わからんくらい歌がうまい。Roxanneは他のクリスチャン役のも動画とかで聴いたけど、アーロンのように歌える人他にいない。絶望と苦悩の淵にいる感情を込めながらも美しい高音を響かせる。歌唱力どうなってんの。

 

で、そのあとサティーンに捨てられるのだけど、子犬のようにすがるような瞳と涙と表情に、胸が締め付けられる。アーロン・トヴェイトは、世界中から歌うまが集まるブロードウェイの中でもトップレベルに歌がうまい俳優さんだと思うけど、やはり演技力もずば抜けているんだなって思った。

ムーラン・ルージュ!はこういっちゃなんだけど話は割と陳腐だし演出もやりすぎで滑稽な感じすらあるのだけど、それを多くの人に響く作品(特殊な状況下とはいえトニー賞とったし、3年以上ロングランしているし、日本でもヒットしたのでそういってよいと思う)として成立させているのって、俳優さんたちの魅力と演技なんだなあなんてことを思った。これは映画も同じ。

 

で、ここからは辛口。

ブロードウェイ版の気に入らなかったところは、映画からの改変設定部分。

特にデュークが、映画版ではコミックリリーフで間抜けなおじさんとして描かれているのだけど、お色気ムンムンでオーラがあるハンサムな男性になっている。それだけに、サティーンに対する支配欲の描写が妙にリアリティがあるというか、きつい。以前浮気した自分の女の顔を焼いて男は殺した的な説明もあり、かなりやばいやつなのだが、なんかかっこよく描かれちゃっている。こういう他人を、特に女性をモノとしか見ないやつ、セーヌ川に投げいれられるべきでは?と思うのだけど、いつの間にかフェードアウトしてて、なぜかカーテンコールでみんなと楽しく踊っていて、こんなの納得いかないよ!

脚本も収集つかなくなったのか、それとも現実世界の出資者に対する忖度か何かですか?

 

もう一つの改変はサティーンのキャラクターと背景。映画は女優として名を成したいから公爵というパトロンが必要なのに、クリスチャンと恋に落ちて公爵を拒否して、クリスチャンと駆け落ちしようとするも自分の死期を知ってクリスチャンを捨てるという、まあわかりやすい古典的な悲劇のヒロイン。

舞台版では、ムーラン・ルージュの踊り子たちを取り仕切る立場で、みんなのためにムーラン・ルージュを守ろうとしている。映画より年齢も上っぽくて、現実を知っていてあきらめている感じもあり、公爵とも普通に寝る。より自立した成熟した女性像になっていて、そこはジェンダーステレオタイプな2001年の映画サティーンからアップデートした部分ではある。のだとは思うのだけど、結局のところサティーンは病気で死ぬというプロットが一緒だと、え、こんなにみんなのために自分を犠牲にしているのに報われないの…?かわいそすぎる!ってなってしまった。しかも、私が見たサティーン役のAshley Lorenさんは細いし顔も薄幸そうな感じなので、余計に気の毒に…。

ムーラン・ルージュ!はオルフェウスの物語をモチーフに椿姫やらラ・ボエーム的な要素も入れた作品なのだが、若い男が成長するために女を殺すなと言いたくなる。

さらには、映画版と違って公爵がコミックリリーフではなく、サティーンを所有物扱いして意のままにしようとしていて、サティーンはムーラン・ルージュやクリスチャンのために逆らえず、ずっと精神的に虐待されているような状態なのに、「誰も私を所有などできない!」って宣言するくらいで終わるのも納得いかない。

「マッド・マックス 怒りのデスロード」や「ゲーム・オブ・スローンズ」を見てしまった今の私には、虐げられたかわいそうな女性を描いて「かわいそうだね」で終わるだけでは足りないのよ。

ムーラン・ルージュと公爵をドラカーリスして、クリスチャンも捨てて、ムーラン・ルージュの女の子たちと別の道を行ってほしい。なんか都合よく善良なパトロンが登場してさ。病気も都合よく治っちゃえばいいよ。RENTもミミは作中では死なないんだし。

 

あと、映画ではクリスチャンは椿姫みたいにお金をサティーンに投げつけるだけなんだけど、舞台版の方は銃を購入して、サティーンに向けた後自分に向ける。これもなんか脅しみたいで、サティーンへの執着の仕方が映画より悪質になっていて嫌だった(映画でも銃は出てくるけど銃を持ち込むのは公爵の手下)。

ロートレックのサティーンへの愛みたいな設定も、それいる?と思ったし。

全体的に登場人物全員が全員サティーンに多くを求めすぎで、それにサティーンが応えようと自分を犠牲にするのが見てて苦しかった。なんかこう、バリバリ働いて、家事もこなし、夫や子供のケアもし、その上で優しさと美しさも失ってはいけないという、女性に多くを求めすぎな現代社会の風潮みたい。そういうのにははっきりとNO!を突き付けるカタルシスが欲しかった。

 

あと、演出もね、ダンスシーンはどれも見どころはあるのだけど、前日にSome Like It Hotを見ていたせいか、そこまで驚愕!って感じではなかったのだよね。ただ、これは席が前方過ぎて全体が見えなかったのと、アーロンばっかり見ていたせいかも。舞台サイドに設置されたバルコニーや前方通路とかかなり広くキャストが動くので目がいくつあっても足りなかった。

 

正直、舞台転換やテンポもあまりうまくないなあと感じてしまったんだよなあ。映像とは違う舞台の難しさって感じ。

カーテンコールも楽しいというよりは、お茶を濁しているように感じてしまった…。いや、盛り上がったし紙吹雪でひゃーってなったけど。

 

映画からの改変でよかったのはニニが、サティーンをねたむ嫌な女ではなかったところかな。

 

と、たくさん文句を言ってしまったけれども、それでも結局のところ私はムーラン・ルージュ!という作品が大好きなので…。

 

いくつか好きな動画上げときます。

 

オリジナルキャストのサティーン役Karen Olivoさんも観てみたかったな。

 

 

ムーラン・ルージュ!といえばやはりこれ

 

映像はないけど、舞台版で一番好きなのはCrazy Rollingです。

 

 

ちなみに、夏に帝劇で日本版が上演されて、それも見に行ったので、その感想もそのうち上げます。