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ミュージカル「ノートルダムの鐘」感想

だいぶ時間が空いてしまったけど、6月に劇団四季のミュージカル「ノートルダムの鐘」を横浜のKAATで見たのでその感想。

 

 

キャスト表

 

 

ヴィクトル・ユゴーの小説「ノートルダム・ド・パリ」を原作としたミュージカル。楽曲は同名のディズニーアニメ映画のものを使っているけれども、ガーゴイルのキャラクターが出てこなかったり結末が悲劇で終わったりとストーリーは原作小説準拠なので別物といっていいかも(説明もBased on The Victor Hugo Novel and Songs From The Disney Filmとなってる)。プログラムの解説によると、ディズニーが当初作ったベルリンで上演された初演版はファミリー向けのアニメ準拠だったのを、アメリカで上演した再演版で現在の形に変更したらしい。

 

ちなみに「ノートルダム・ド・パリ」というフランスのミュージカルが何年か前にシアターオーブで来日公演していたと思うけど、それとは別作品。

 

感想としては、民衆を演じてた人達がその場で着替えて石像になったり、「普通の人」が「怪物」へ、またその逆もというのが、とても演劇的で面白かったし、クワイヤの重厚さや劇団四季の俳優さんたちの(概ね)レベルの高いパフォーマンスは見ごたえがあった。とても優れた作品だと思う。

が、、、好きかどうかと言われると好きにはなれない。それは作品のクオリティとは別なのよね…。

座席が1階席後方の端だったので、作品世界に没入するのが難しいのもあったかな。あと、やはり空オケなのが残念。

 

以下、ネタバレありの感想

 

 

なぜ好きになれないかっていえば、ヒロインのエスメラルダが、カジモド、フロロー、フィーバスという3人の男たちの勝手な欲望、願望の対象にされ、勝手に理想化されたり貶められたりしたあげく、最終的に火あぶりになって死んでしまうというのが、もうだめ。エスメラルダもこの世を呪うでもなく、いつか明るい未来が来ますようにと祈るという、なんじゃそりゃ~。

なんでもプログラムの原作解説によると、この若い女性を男性三人が争う四角関係の構図はユゴーの他作品にも使われる図式らしく、フロロー=カトリック教会の権力、フィーバス=王権、カジモド=民衆と表していて、舞台である15世紀はまだ民衆の時代はまだ来ていないので、「この世で最も大切な価値」のシンボルであるエスメラルダとともに死んでしまうという、とても政治的な意味合いがあるのだとか。

理想とか正義とかを女性像で表象するのはよく西洋絵画(たいてい半裸)で見ますけれども(そういえばノートルダム自体、聖母マリアのことだからある意味理想化された女性像だなあと思ったり)、まあ、なんつーか、つまり女性は同じ人間でも民衆でもないってことねー?ザ・男性中心主義!!と思っちゃう。エスメラルダはあくまでも「客体」でしかなく、そこが好きになれない。もうこれは原作自体がそうなので仕方ないし、個人的な好みにもよるところはあるので、このミュージカル自体がだめというつもりはない。

 

あと、思ったのは主人公のカジモドがちょっと影が薄くない?もちろん「陽差しの中へ(Out There)」「石になりたい(Made of Stone)というビッグナンバーはあるのだけど。それに見た目の醜さと、内面や行いの美しさの対比が重要なテーマであると思うけど、カジモドは言うほど心が美しいか?と思っちゃう。結局エスメラルダを自分に都合よく解釈して最後には地下に閉じ込めてるじゃん…。最初に「普通の青年」として登場して「怪物」に変化し、最後にまた戻るという演出もいまいちピンとこなかった。

 

フロローはディズニーアニメで見たときも「こんな気持ち悪いキャラクターだしちゃって大丈夫!?」ってなるくらい個人的に一番気持ち悪い悪役で、この世のミソジニーを煮詰めたような存在。19世紀にこういうキャラクター、しかも神職者を描き出したという点でユゴーは偉大だとは思うけれども…。

そりゃ3人の中から選べと言われれば「君と一緒に行くよ」というフィーバスを選ぶのはわかるが、正直エスメラルダがフィーバスに惹かれる理由もよくわからん。

 

曲については、アラン・メンケンなので当然よい(作詞はWickedのスティーブン・シュワルツ)。あと、海宝さん目当てで昔のキャストアルバム買って聴いてたので聞き馴染みもあり。一番印象に残ったのは一幕終わりの「エスメラルダ」かなあ。

 

キャストについては、皆さん総合的には上手なのだけど、どうも劇団四季の俳優さんの歌い方苦手だなあと思うことが多くて…。今回でいうとフィーバスの神永さん。アナ雪のクリストフのときも、うーんと思ったのだよな(実は数年前にジーザス・クライスト・スーパースターでも見ているのだが歌がどうだったか覚えていない…)。喉をしめるような歌い方とやたらとビブラートかけるところが苦手…。

エスメラルダの岡村美南さんは持ってるキャストアルバムも彼女のなので、聴き馴染みあるし美しい力強い歌声でよかった。

金本さんも普通に良かったと思うけどそんなに印象に残らなかったかも…。

 

だいぶ後になってだけど、オーブのガラコンサートでマイケル・アーデンのOut Thereを聴くことができてそれはそれは素晴らしかった…英語版での上演見てみたかったな。

でも話が好きになれないなら同じか…。