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ミュージカル「ジャック・ザ・リッパー」感想

ミュージカル「ジャック・ザ・リッパー」を日生劇場に見に行ってきました。

 

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19世紀末のロンドンで起きた有名な切り裂きジャック事件をモチーフにしたミュージカル。作品としてはチェコで最初に作られたそうだけど、韓国で2009年に大幅にアレンジが加えられて上演され、それ以来ずっと大人気の演目だとか。私は全然知らなかったのだけど、来日公演も行われていたようです。そして今回その日本版初演が上演されるということで見に行ってきた。

 

 

 

メインキャストは以下の通り(敬称略)。

ダニエル:木村達成小野賢章(Wキャスト)
アンダーソン:加藤和樹松下優也(Wキャスト)
ジャック:加藤和樹堂珍嘉邦(Wキャスト)
グロリア:May'n
ポリー:エリアンナ
モンロー:田代万里生

演出は白井晃さん。

 

2回見に行って、Wキャストの組み合わせは①木村さん・加藤さん・堂珍さん、②小野さん・松下さん・加藤さんで見ました。

 

感想としては、曲も演出も好きだったし、面白かったです。

私、韓国ミュージカルは見たことないので知らないのですが、展開とか辻褄とか倫理観とか結構めちゃくちゃなんだけど、よくわからないパワーと勢いで押し切ってなんかすごいもの見たぞってなる感じ、韓国の映画やドラマでも時々あるやつ!と思った。1幕ラストと2幕後半の異様な盛り上がりはクセになりますね。

 

あと、一番言いたい感想は、アンダーソン役の加藤和樹さんがめちゃくちゃかっこよかったということですね。あのやさぐれた感じの色気は何なの…ジャック役もよかったけど、アンダーソン役が佇まいに衣装に歌にとすべて100点満点でした。大変申し訳ないことに、「ホタルノヒカリ」のドラマで当て馬役やっていたことと、井上芳雄さんのミュージカル番組によく出てくるという程度の認識しかなかったのですけど、出演作が絶えない人気の理由がわかりました…。

 

以下、ネタバレありの感想

 

ストーリーはハンパな夢のひとかけらが不意に誰かを傷つけていく感じでした(言いたいだけ)。臓器移植すれば治る病気なのか?というのと、移植したい臓器を新聞紙にくるんで持って帰っていいのかっていうのと、冷凍した後どこに保存したんだ?そもそもどんだけ臓器集めるの?てのが気になった…。

 

正直1幕ラストあたりまでは結構かったるいなと感じてしまったのだけど、その原因は「現在」「2日前」「7年前」「1か月前」の時系列が行ったり来たりして回想の中で回想が始まったりするので、わかりにくかったからかと。同じシーンを2回繰り返す演出も2回あってテンポ悪くしていた気がするし。ただ、2回目は最初からわかっていたせいか1回目ほどはかったるく感じなかった。

あと、グロリア役の方がちょっと華やかさに欠けてたせいもあるかも…。7年前の回想でグロリアが登場したの気づかなくて(これはアンサンブルと同じ赤いドレスのせいもあるが…)、だいぶ話が進んでからあれこの人がヒロインなの?って感じだった。歌も普通に上手だとは思うのだけど、高音が弱かったし、迫力に欠けていた気がする。なので、ダニエルとグロリアのラブストーリーに説得力がなく(ただでさえ高速で唐突に恋に落ちるのに)、7年前の回想終わった後に「くだらねー話しやがって!」ってキレるアンダーソンに共感してしまった。

 

でも1幕ラストのジャック再登場までのダニエルとアンダーソンとモンロー3人の歌と、2幕のアンダーソンの「俺はこの街が嫌いだ」の歌からラスト「カオス」までの勢いはすごい。ジャックは実は自分だったというオチは情報ほとんど入れずに見た1回目観劇の2幕最初の方で予測できてしまっていたんですけど、最後のモンロー乱入からのカオスは予想できなかったわ。

ラストでアンダーソンが、この顛末が報道されたら大衆は悲恋ストーリーに同情するだろう、それでは殺された娼婦たちがただの小道具みたいになってしまう!と言って真実を闇に葬る決意をしたのはよいなと思いました。まあ、この作品自体が連続猟奇殺人を娯楽化して消費しているという矛盾をはらむのですが…。

 

キャストは、主役のダニエルは木村さんも小野さんもどちらもよかったです。小野さんはハリー・ポッターやスパイダーバースの吹替で声はこれまでも聞いていたと思うのだけど、さすが声優さんは舞台でもセリフ聞き取りやすいし、なんていうか表現の幅が広いですよね。木村さんは、「The Last 5 Years」の配信で見て、歌上手だなと思ったけど、すごくハンサムなのでそのうち朝ドラとかに出てテレビでもブレイクしそう。

 

アンダーソン役は、松下さんはコカイン中毒の汚職刑事をやるにはちょっと爽やかすぎたかな。でもポリーとのシーンの切ない感じはよかった。朝ドラ「べっぴんさん」で当て馬役をやっていたのは知っていたけど、歌える人というのは知らなかった。

そしてすでに書いた通り、アンダーソン役はとにかく加藤さんがかっこよすぎた。タバコやコカイン吸う姿もタイプライター打つ姿も報告書に火をつける姿もダニエルに頭ぶん殴られる姿も完璧。アンダーソン刑事のスピンオフお待ちしております。

 

そしてジャック役。実は私、学生の頃CHEMISTRY割と好きだったんです。といっても、CDを買うお金はなかったのでレンタルしてMDに録音して、そのMDも再生機器がもはやないので捨ててしまったという程度なんですけど。久々にサブスクで聴いたらやっぱりよかったのでアルバム買おうかな…。ということで、ジャック役の堂珍さんですが、事前にYouTubeの歌唱動画を見たときは、ミュージカルの歌い方ではないので、歌詞が聞き取れないしこれはやばいかも…と不安でした(逆にポップソングをミュージカルのはっきりした滑舌で歌われると微妙になるので、ある意味当たり前なのだけど…)。実際に見てみると、確かに歌詞の聞き取りづらさはあるもののそれほど気になることもなく、逆にジャックの異質さにマッチしていた面もあったと思う。とはいえ、これが正解なのか…?という疑問もあって、2回目を見に行ったのは加藤さんジャックを見て確認したかったからなのですよね。ジャックはメフィストフェレス的存在だけど、堂珍さんはトリックスター的な感じで、加藤さんの方は魔王的な感じでした。どちらも良かったと思うけど、加藤さんのジャックの方が正統派で見やすかったかな。ただ、「俺がジャックだ」の歌で、ジャックとダニエルがスイッチするシーンは、木村さん・堂珍さんペアの方がよかった。

 

モンロー役の田代万里生さんは、これまで演じてきた役柄とは全然違うらしいのですが、私が見たことがあるのが「マタハリ」のラドゥーと「スリルミー」の私だけなので、むしろやべー奴を演じる人という印象しかない…(笑)多分モンロー役を演じるにはかっこよすぎるんだろうけど。モンローの「特ダネ」の歌は、ミュージカル的で好きです。

 

ポリー役のエリアンナさん。実はこのミュージカルのチケットとった理由の一つは彼女の歌が聴きたかったから。というのも、2020年のCHESS(これ見たのすごく昔に感じる…)で、ラミンさんやサマンサさんに負けないパワフルな歌声がすごく印象に残っていたんですよね。ただ今回は出番が少なすぎたのもあり、思ったほど歌声に圧倒されたりはなかったかな…上手だしパワフルなんですが。

グロリア役のMay'nさんはすでに書いた通り、ちょっと華やかさに欠けたかな…。不幸のどん底にいる7年後の再会のシーンからはよかったと思うけど。

 

アンサンブルの皆さんの歌もダンスもよかったし、総じて満足でした。

そして、カーテンコールで、キャストの皆さんが持ち歌を少しずつ披露してくれるのすごくよかった!贅沢!!

 

そういえば、ラフマニノフのピアノ協奏曲2番みたいなピアノ伴奏が何度か入ってたな…。

 

カメラは入っていたらしいので、配信とかあったらまた見たいです。