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ミュージカル「王家の紋章」感想

ミュージカル「王家の紋章」を帝国劇場に見に行ってきました。

 

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私が見に行った回のキャストは以下の通り(それにしてもキャロルよりもメンフィスの方が上なんですねえ…)

 

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ちなみに私は、「王家の紋章」原作は50巻くらいまでは読んでいる。姉が単行本を買っていたので。あまりに同じことを繰り返しているので挫折したけど。完結したら(するのか?)読み直そうかな。

なので、近くの席に座っていた人がメンフィスとアイシスについて「本当の姉弟じゃないんだよね?」みたいな会話をしているのが聞こえれば、「ちがうわ……古代エジプトでは兄弟姉妹が結婚することはよくあることなのよ……」と心の中のキャロルが話すし、「愛いやつ」のセリフが来れば、「愛いやついただきましたーー!」となるくらいには嗜んでいます(?)。

 

王家の紋章のミュージカルがあることは数年前から知っていたけど、「えー、どうなんだろ…見てみたいような怖いような…」という程度。

なぜ見に行ったかって、それは海宝さんの歌が聴きたかったから。あと、新妻さんも。

  

で、見に行った感想は……

 

王家の紋章をミュージカルにする意味とは……??

私は一体何を見たかったのか……??一体何を見たのか……???

王の眠りを妨げぐる者に死の翼触れるべし………

 

多分呪いにかかったせいだと思うのですけど、なんだか疲れてもうカーテンコール時には目が泳いで拍手をする気力もないって感じでした(一応拍手はしたけど…)。

 

あ、キャストの皆さん、(一部を除いて)歌は上手で聴きごたえありました。

ゲネプロ動画はこちら(私が見た組み合わせとは違うけど)。

 

 

 

 

以下感想(辛口というか、ツッコミしか入れていない)

 

 

普通にミュージカルとしてみると、脚本も曲も弱く、衣装も演出もダサくて、もう俳優さんの歌がうまいくらいしか褒めるとこがない。そして、これだけ歌える俳優さんそろえるなら、別の演目で見たい。「アイーダ」(ミュージカルの方ね)でいいじゃん、もう。

あ、青を基調としてヒエログリフが浮かび上がる舞台セットと照明は結構よかった。

 

で、なぜそうなるかというと、「王家の紋章」って、原作自体が古代エジプトメソポタミアの歴史が出てくるとことか、キャロルが機転を利かせてピンチを切り抜ける展開とかを除くと、もはや大人の鑑賞に堪える作品じゃないんですよね。私はエジプトだけじゃなくてヒッタイトとかアッシリアとかギリシャの国々とかが出てくる(まあたいていどの国の人もキャロルを殺そうとするか恋するかなんですけど…)のが面白いと思うけど、それは3時間のミュージカルでは描けないしね…。あとはもう、水戸黄門かっていう毎回お決まりの展開の永遠ループで、キャラ萌えと独特のセリフ回しを面白がるくらいしかない。
それならそれで、それを楽しめるように作れたと思うのですよ。なぜか(見たことないけど)エリザベート的な東宝グランドミュージカル作品としてやろうとするから、中途半端になって、結果つまんない作品になってる気がする。

原作再現度に本気出した方が面白くなったと思うし、宝塚か本格2.5次元としてやった方が数百倍良かったんじゃないかと思うのです。だってさ、メンフィスって美しい少年王なんですよ。宝塚の男役とか、2.5次元で活躍されてる中性的な容姿の俳優さんとかの方が絶対合っているわけ。

スタンプやシールにもなっているような原作の独特のセリフも、もっと効果的にバシィッ!とあの絵柄とフォントが浮かび上がるような感じで決めてほしいのに、普通に言ってたらつまんないっつーか。

キャロル役の神田沙也加さんとか、ルカやウナスを演じていた2.5次元舞台で活躍してる俳優さんたちとか、他で見たらちょっとわざとらしすぎじゃないの…って思ってしまったかもしれないような演技の方が明らかに作品にはまってた。

 

 

まあ、ミュージカルは歌が重要だとは思うので、最終的に歌がよければすべてよしにはなると思うのですが…印象に残る曲がない。そして特に二幕とか、一人ずつ前に出てきて歌う歌謡ショーっぽくて、曲も歌謡曲みたいだし、ここはNHKホールか??ってなった。

それならそれで歌をじっくり聞かせてくれればいいのだけど、そこをダサい衣装とダンスが邪魔をする。。

 

もう本当にダンスシーンが微妙すぎて一番のマイナスポイント。効果的だったのって、キャロルが市場を見に来て喜んでいるシーンくらいでは?

最初のキャロルが古代へ連れ去られるシーンで出てくるナイルの精?みたいのが何だろう…シドニー五輪日本選手団のポンチョ(登場時に中継アナウンサーが絶句した伝説の衣装)みたいだった。五輪開催中だけに。そしてその青いポンチョの人たちがひらひら動くことでナイルの流れを表すというのが学芸会ぽい。

多分死が関係するシーンで登場するアヌビス神の化身?みたいなダンサーたちの衣装は、出動中の消防士(犬耳つき)にしか見えんかった。。ミタムン王女が焼き殺される時も出てくるしね…消火活動はしてなかったけど。

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比較画像。顔の周りの布が似てる?

 

そしてそのミタムン王女がさー、一幕であっさりと殺害されるわけですが、ことあるごとに出てきて変に手足をばたばたさせる踊りを踊るわけ。イズミル王子の回想とかで出てくるならわかるよ?でも関係ないシーンというか、歌唱シーンでほぼ全部出てきて手足ばたばたさせる謎ダンスを踊るわけ。何なの?ミタムン役の人を最低この時間は登場させなければいけないという契約でも結んでるの?

あとは、キャロルが古代で最初に出会う少年セチ君も、脈絡なく出てきて謎ダンスを踊る。彼は無辜の庶民が戦争によって命を落とすという悲劇を象徴するキャラクター(多分。ごめん、原作に登場していたかどうかも覚えてないけど!)なのですが、やたらとダンスしに出てくるので、肝心の死んでしまうシーンが印象に残らない。

 

あとはキャストについて…

 

海宝さん、歌はさすが上手でした…がまじめにやればやるほど、コスプレパーティーの衣装ですかといいたくなるような安っぽいキラキラ衣装が、浮いてしまって…。メンフィスの衣装、本当にもう少しどうにかならなかったの…?

もっと合っている役柄での主演をお待ちしています。

あ、上の動画にもある後半のキャロルがメンフィス守るために自らヒッタイト兵の前に姿を現した後の、メンフィスの「何一つ報いてやれずまた助けられた」の歌(曲名はわからない)よかったです。そうなの、キャロルって余計なことに首突っ込んでピンチを招く典型的うざい少女漫画ヒロインなのだけど、メンフィスを命がけで守っているので、メンフィスがぞっこんラブなのにも理由があるのよ…。

 

歌唱的に一番見せ場があるのはアイシスで、新妻さんの歌はそれは素晴らしかったです。拍手も一番大きかった。けど、長い袖?のお衣装をヒラリフワリとするしぐさが多いので、なんていうか、ジュディ・オング……?曲も「もどかしい想い~」ばっかり歌っているし、二幕はあんまり出番がなくて、最後にはAh~Ah~と声を張り上げる要員になっているという……原作のアイシスに比べると、つまんない扱いなんですよね~。もったいない。

 

神田沙也加さんは上にも書いたけど、一番作品世界を体現していてキャロルにピッタリ。声はちょっと声量が足りない気がしたけど、アナ雪のアナの声だ~となってミーハー心が満たされました。

実は木下晴香さんも見たくて後半日程でもチケットとっていたのだけど、もう一回見る気が失せて(作品の内容的にも、コロナの感染状況的にも)チケット払い戻ししました。

 

イズミル王子役の平方元基さんもよかったです。特に一幕終わりのエジプトへの報復を誓うとことかかっこよかった。

イズミル王子といえば、当て馬選手権があったら、間違いなく優勝候補の一人。原作も途中(かなり初期の方)まではイズミル王子の方がメンフィスよりもかっこいいんですよねー。ただ、ストーカーすぎて、キャロルの行くところどこにでも現れて、連れ去る→逃げられるを永遠に繰り返しては、「ナイルの姫よ、なぜ私を嫌う!」とか言ってて、いや、あんたさぁ…てなる。

 

ライアン兄さんについては、あんなに登場シーンいらないのでは?となった。だって「キャロルどこにいる!」しか言わないもん。原作もそうだけど。その分をキャロルとメンフィスが惹かれあうのをもっと説得的に描くシーンにあてるべきだったんではないですかね。

ちなみに、ライアン兄さん、キャロルにもロディ兄さんにも似ず一人だけ黒髪なので、実は血のつながらない兄妹でタイムスリップしてきたメンフィス(もしくは生まれ変わり)で時を超えて再び巡り合う…というオチを勝手に予想していたのだけどどうやら関係ないらしい(?)

 

他は特にこれといって感想ないのですが、宰相イムホテップ(この名前きくとハムナプトラ思い出しちゃう)役の人、配信でみたモーツァルト!でもひどいと思ったけど、生で聴いてもひどかった。喉どうしたの?って感じ。あれで許されるどころか称賛されてるのどうかと思うよ。

 

ところで東宝のミュージカルってキャストアルバムの配信とか全然ないんですね。オリジナルだと曲を知らないから最初ピンと来なくても、聞いていくうちに馴染んで好きになったりするのに音源がないから細切れの動画をみるしかない。配信だったらちょっと買ってみようかくらいには思うのに、王家はDVDしかない。Blu-rayですらないのに1万円も払いたくないよ…。権利関係とかあるのかもしれないけど、劇団四季は権利関係厳しそうな海外作品も割と配信で出していることを思うと、単にやる気の問題?

そこいくと海外作品って日本版はなくてもたいてい海外のキャストアルバムはあるからありがたいよねー。

 

なんだかとても疲れたので、古代エジプト舞台の作品ってことで「アイーダ」(オペラの方)の動画を見ながら、わあ…豪華…きれい…何よりヴェルディの音楽が素晴らしい…となって心を癒したのでした(そりゃ製作費もチケット代も桁が違うでしょーが)。