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ミュージカル「アリージャンス~忠誠~」感想

ミュージカル「アリージャンス~忠誠~」を見てきました。

公式HP

 

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ミュージカルを見に行くのは、ラミン・カリムルーとサマンサ・バークスが出演した「CHESS」以来。2020年2月上旬だったのでコロナが国内で本格的に感染拡大する直前だったな…。

 

「アリージャンス(Allegiance)」は、スタートレックで有名な日系アメリカ人俳優ジョージ・タケイの体験談をもとにした第二次大戦中のアメリカの日系人家族を描いた物語。2015年にブロードウェイで初演、キャストはジョージ・タケイ、レア・サロンガ、テリー・リアン、マイケル・K・リーら。

 

この作品は日系人強制収容所を扱ったミュージカルとしてなんとなく存在は知っていたのだけど、詳しいストーリーや曲は全く知らなかった。見に行こうと思ったきっかけは海宝直人さんを見たかったから。扱っているテーマにも興味があったので、新型コロナの収束がみえず観劇に不安はありつつも、チケットを取りました。

 

結果、見に行って良かった!最初見た後、また見たくなってチケットを買い足して、2回見に行きました。あと、ブロードウェイオリジナルキャストのアルバムも購入した。

 

ストーリーは、登場人物のそれぞれの立場がとても分かりやすく描かれているので、特に歴史の予習とかしなくても問題ない。曲も明るい曲調のものも多かったりレミゼっぽい曲調のものもあったりで、私好みでした。俳優さんたちの演技も素晴らしかったです。

 

 

 

以下取り留めない感想(ストーリーのネタバレあり)

 

アメリカでは日系人をアジア系キャスト、白人を白人キャストが演じるけど、日本での上演は全員日本人になってしまうので、どうやって描き分けるかが悩みどころだったと思う。白人役キャストは髪色を茶色?赤毛?にする(全員同じ色でなくても…とちょっと思った)、英語のセリフを織り交ぜる(たとえばキムラ家に来るFBIや収容所の軍人が英語で話して、それを理解できない祖父の描写があった)など工夫していた。

あと、これは意図的かはわからないのだけど、日系1世の父タツオ(渡辺徹)と祖父カイト(上條恒彦)が普通の会話調で話すのに比べて、日系二世のサミー(海宝直人)とケイ(濱田めぐみ)は、やや大げさ(ミュージカル調?)で話すのは、日本語なまりの英語とネイティブの英語の違いの表現にもなっているのかなと思った(まあこれは普段ミュージカル中心の俳優さんとストレートプレイ中心の俳優さんの違いかも…)

 

・「我慢」という曲は、英語版でも「GAMAN」なのだけど、どうにも歌に乗せると「我慢」っぽく聞こえないのだよな…。あと、それを日本人の美徳的に捉えられるのはモヤっとする。我慢に我慢を重ねて、結果何もよくならず、悪化する一方だったのが、まさに当時の(今も)日本なわけで…。

 

 ・自らの忠誠を示して、日系人の立場をよくしようと考えて軍隊に志願するサミー、両親を逮捕し家も奪っておきながら国のために戦争に行け(そして死ね)という理不尽に対し、徴兵拒否という不服従を選択するフランキー、どちらの気持ちもわかる。サミーは収容される前から志願を望んでいたし、フランキーはロースクールに通っていたという違いもあると思う。私はどちらかというとフランキーの言い分の方が正当と感じるけど。 

 

・歌以外のパートは、タツオ役の渡辺徹さん、祖父と年老いたサミー役の上條恒彦さん、マイク・マサオカ役の今井朋彦さんたち舞台(テレビでも)で活躍されているベテラン俳優さんたちがさすがの演技と存在感だった。作品がぐぐっと締まるというか、リアリティが出て、物語がすっと入ってきたように思う。

 

・歌は海宝さんと濱田さんのうまさが他とレベルが全然違った…。

海宝さんは、2019年の「ジーザス・クライスト・スーパースターinコンサート」を見に行った時、ラミン・カリムルーら海外キャストに全く劣らぬ歌声で衝撃を受けて、その後テレビとか配信で見るようになって、ミュージカルで生で見たい!と思ってたのが今回念願叶った形。濱田めぐみさんについては、劇団四季のスターということは知っていたし、テレビで歌うのも何度か拝見していたのだけど、正直ちょっと歌い方が苦手かな…と思っていました実は。でも実際に舞台で生でその歌声をきくと、圧倒された。

海宝さんも濱田さんも、音程や声量の安定感は当たり前として、感情を歌に乗せていて、話すように歌えるというか、ちゃんと演技の中に歌があるのですよね。

・作品のハイライトはケイが歌う「Higherもっと高く)」。2回とも濱田さんが本当にすばらしかった。序盤の自分や弟がブランコに乗って、だんだん自分で高く高く漕いでいく歌詞のところは情景が浮かぶようだったし、どうして弟と自分はこんなに違ってしまったのだろうというところから、一人の女性として自立する決意を歌い上げる流れがものすごくドラマチックだった。こういう歌を入れてくるところが、アメリカのミュージカルだなあと感じるし、このミュージカルの好きなところ。 

ただ、ケイの決意が基本的にフランキーとの恋愛を中心に描かれていて、そこはもしかしたら今作られたらちょっと違う描かれ方になったかも?と思った。


強制収容所で、サミーが恋に落ちる軍の看護師で白人のハナを演じたのが小南満佑子さん。朝ドラ「エール」でヒロインのライバル役を演じていたので、彼女の歌をきけるのもとても楽しみにしていました。歌は、時々音が外れるのがちょっと気になった。。でも、海宝さんとのデュエット「With You(きみと)」がとーーっても素敵だった(ラジオ聞きながら彼女が躍るシーンで後ろに謎の歌手がいて若干混乱するのだが…)。ああ、海宝さんと小南さんが出ているときにレミゼを見に行かなかったわたしのばかばか!ってなります。

 

 

 ・ケイが恋に落ちるフランキーを演じるのは中河内雅貴さん。「Paradise」のダンスのシーンとか、立ち姿がきれいでかっこよかったです(歌は普通…)。ケイのことを折り紙で政治的な立場を表明する素敵な女性と評して、誰かの娘や母親におさまるのはもったいないよ!って伝えるとことか、かっこいいんですよね、フランキー。これは好きになってしまうよね。


・いい曲はたくさんあるけど、2幕終盤、ケイとサミーが口論になり喧嘩別れになってしまうシーンで歌う「How Can You Go?(行くのね?)」も好きで何度も繰り返し見たい。ミュージカルの歌合戦みたいな言い合いシーン好きなので…。そして濱田さんと海宝さんの歌唱力が爆発していた。

 

・この作品の辛いと同時によくできてるなと思うところは、ケイ、サミー、フランキー、タツオの誰かが間違っているとかがなく(悪いのは分断させた戦争と政府)、ボタンの掛け違いがなければこうはならなかったんじゃないの?となるところ。特にサミーは父親に反感を持ちつつも認められたいという気持ちがずっとあって(サミーの「What Makes A Man(男は)」はそういう歌)、タツオパパが「よくやった」「誇りに思う」って一言言ってあげてれば、違ったんじゃない??って思ってしまう。タツオパパも子供への愛情は確かにあるのに、それを伝えられない頑固一徹な日本的父親というか。そしてサミーもフランキーたちについて「臆病者」「裏切者」「罰せられるべきだ」なんて言いすぎなんだよ…(このセリフのある「Resist(抵抗)」の海宝さんの滑舌がまた素晴らしいんですよね)。ある意味似たもの親子だ…。

 

・最後には救いがあるけど、生きている間に和解ができなかったというのは辛い。年老いたサムを演じる上條恒彦さん、祖父カイトのときと全然違って、頑固な元軍人という佇まいで、でも若い頃の幼いサミーの面影もあってさすがだった。

 

・難しいなと思うのが、この作品はアメリカで上演されるのと日本で上演されるのとでは文脈が違ってしまうところ。アメリカで上演される際には、自国の負の歴史を明らかにするというわかりやすい意義があるけど、日本でこの作品を見た日本人の観客がこの作品から受け止めるものって全然違ってしまうのでは?と。

アメリカ政府ひどい」「日系人かわいそう」とか、自分が当時の日系人の立場だったらどういう選択をするかと被害者視点で考えたり、「日本人であるということは…」と民族的アイデンティティに思いをはせるのはダメというわけではないけど、なんかそれだけでいいのかなと思ってしまう。外国籍であることや民族・人種が違うことを理由とした差別・人権侵害は今もどこの国でも、もちろん日本でも起こっているわけで、日本政府や自分が、当時のアメリカ政府やマジョリティと同じ立場にあるということも考えなければいけないのではないかと。アリージャンスの宣伝や論評で「家族愛」という普遍的なテーマを扱っているというのをよく読んだけど、どちらかというとこの作品のもつ普遍性って人種差別と排外主義による人権侵害、分断を描いたことにあるのではと私は感じた。

 

すごく長くなってしまったけど、一見の価値あるミュージカルだと思うので、また再演があるといいな。

ちなみにブロードウェイオリジナルキャストのDVDも注文したから今到着を待ってるところ。日本版との演出の違いとか、微妙にへんてこな日本語とかをチェックしたいと思います。

日本版についてはCDやブルーレイ、DVDが出ることはなさそうかな?でも5月22日にWOWOWで放送があったので録画できてすごくありがたかった。